プログラミング言語"Perl"の商標登録について(異議申立の結果)

こちらでの発表が遅れてしまいましたが、以前お知らせいたしました日本におけるPerlの商標登録について異議申立を行い、その後本件について結果が確定いたしましたので報告させていただきます。結論から言うと取得されていた商標登録第5314384号は10/18日付けで登録が抹消されました。

Perlという技術・言語はこれからもオープンなものであり、使用料等が発生することは一切ありません。

なお今回の異議申立についてはJapan Perl Associationと米国等におけるPerlの商標保持者であるYet Another Society (The Perl Foundation) の連名で行いました。その他情報収集等で様々な関係者の御協力いただきました。この場を借りて皆様に御礼申し上げます。

決定した異議の詳細については下記リンクよりご確認いただけます:

Perl5 PumpkingにRicardo Signes氏

Perl5のリリースマネージャー・プロダクトマネージャーであるところの Pumpking が2年ぶりに交代しました。この2年の間数々のプロセス・組織的な改革を成し遂げたJesse Vincent氏から(氏のYAPC::Asia Tokyo 2011での"Perl 5.16 and Beyond"でのトーク)、今年のYAPC::Asia Tokyo 2011のゲストスピーカーの一人として招待されていた Ricardo Signes氏(氏のYAPC::Asia Tokyo 2011での"Perl 5.14 For Pragmatists" と "闇のEメール伝説(Email Hates The Living)"のトーク)にバトンが引き渡されました。

Ricardo氏は方針的には今後もJesse氏の路線を踏襲していくそうです。Perl 5.15.5 (2011/11/20予定)、 5.14.3 (2011/12/20予定)、そして来春のPerl 5.16のリリースもスケジュール通り行われるそうです。

The Future Of Perl5 の和訳

以下、"The Future Of Perl5" という、Andy Lester氏による Jesse Vicent氏のOSCON 2011での発表内容のまとめです。Perl5 の今後のロードマップがおぼろげに見えてくる良いエントリーだと思いましたので、和訳・意訳しました。

(ここから)

Perl5の開発リード(pumpking)のJesse Vincent氏が今年のOSCONで"Perl 5.16とそれから"という、Perl5 の未来の道筋を解説するプレゼンテーションを行いました。このスライドはslideshareにあがっており、皆さんも是非一読してみることをおすすめします。私はPerl5開発者メーリングリストである perl5-portersをもう数年購読していませんが、このプレゼンテーションは Perl5 をレガシーな環境でも使い続けられるようにしつつ、技術的な革新を行っていくためにどのような試行錯誤が開発者達によって行われてきたのかを改めて浮き彫りにしてくれる素晴らしい資料だと思います。

なお、Pumpkingは厳密には開発リードというか、あちこちの開発者達の意見をまとめる裁定者のような役目を担います。またJesse以前はPumpkingとはPerlのリリース自体の責任を負う人でしたが、リリースプロセスは現在は役目としては別となりコミュニティのより幅広い層の人達が参加できるように改訂されています。

スライド内容のハイライトは以下の通り:

  • Perl5はある一定の変更がなされたらリリースされるのではなく、定期的にリリースが行われる時限リリース方式に変わった。

  • マイナーバージョンが奇数の場合は開発版(例:5.13.x)、偶数の場合は安定版(例: 5.14.x)、というポリシーは以前と同じく続けられる

  • 現在の安定版は Perl 5.14.1 だが、 5.12.4も5.15.0 もちゃんとリリースされている

  • 以前(注釈:Perl 5.12.x以前の話だと思われる)はPerlをリリースするための作業はpumpkingが一人で行って3週間もかかっていた。今は全てがドキュメント化され、数時間で終えられるプロセスとなっている。リリースはボランティアベースで何人のメンテナが順番にその責任を負うようになった。Larry (注:Perlの作者であるLarry Wall氏)曰く「Pumpkingが英雄である必要があった時代は終わった」。

  • Perl5 の開発・リリースが一段と加速するようになり、今度は逆に間違いを犯した場合にその状態から回復する方法も必要となっていくだろう

  • Perl5 はいまよりさらに有効なデフォルト値・動作を有効に変更されるべきである。なおデフォルト値とは以下のような動作の制御も行う物も含め想定している(注釈:use strictのように、プラグマやスイッチでデフォルト

    • 警告(warnings)を有効にする
    • autodieに準ずる動作を有効にする
    • 失敗の戻り値を返すのではなく、例外を使用するようにする
    • 引数が1個と2個のopen()を無効にする
    • Latin-1への自動変換を無効にする
    • UTF-8への自動変換を有効にする
    • 基本的なオブジェクト・メソッドを有効にする
    • 間接的オブジェクト構文を無効にする
  • Perl5 は全ての環境で動くように進化するべきである。全てのOS、全てのブラウザ、全ての電話端末がターゲットである

  • Perl5 コアへの変更は古いコードをちゃんとサポートするべきである。Perl5プログラマー達にPerl5本体の変更から自分を守るための防御的なコーディングを強いる事はしない(注釈:Perl5は基本的にこれまでも後方互換性に相当気をつけて来た数少ない言語です)

  • Perl5ランタイムはスリム化されるべきである。古くからあるいくつかのモジュールはコアから切り離され、CPANへと移動されている。これらは非推奨化されているのではなく、あくまでコアとは別物にされているだけである。

  • また、このようにスリム化されたPerlと、それら全てのモジュールがバンドル化されたPerlの二つのバージョンをリリースするようにするべきである

  • テストスイートは言語本体、バグ修正、そして実装検証の種類に分類されるべきである。

これらの事をなるたけ早くもたらすためにあなたができる事のひとつはPerl5 コアのメンテナンスファンドに寄付することですので、是非ご検討ください

私は個人的にはこのトークを見る事ができなかったので動画があれば是非見たいと考えています。

最後になりましたが、Perl5をこのように素晴らしい物にしてくれているJesseとp5pの皆さんに惜しみない賛辞を送りたいと思います。

YAPC::Asia 2011 スピーカー募集のお知らせ (Call For Papers)

(English follows Japanese)


コアなネタ、軽いネタ、コミュニティに関するネタ、開発手法のネタ、Perlに触れているものであればバリバリPerlである必要はありません。YAPCなら興味深ければなんでも有り!一人何個でも応募できますので是非お気軽にどうぞ!

またYAPCでは毎年会場でできた縁でその後の就職が決まったり、新しい道が開けたりする参加者がたくさんいます。その中でも発表側に回るというのは最大のメリットを得ることができます。皆様のご応募をお待ちしております!

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If you already haven't heard, we are open for talk submissions for YAPC::Asia Tokyo 2011. If you need help finding a place to stay, or just general guidance around the area, please contact @lestrrat. Particularly, if there are enough of you, I'm willing to go look for a bulk discount on hotels (so far I've only heard from 1 person only!)

Please join us in the fun!

YAPC::Asia Tokyo 2011

[English follows Japanese]

(本サイト公開に少々手間取っておりますので、とりあえず告知だけしておきます)

東日本大震災などがあって色々と懸念材料もありましたが、今年もYAPC::Asia Tokyo 2011は予定通り 10/13, 14, 15に執り行われます。会場はおなじみ東京工業大学 大岡山キャンパスです。

なおゲストスピーカーは AnyEvent, Coro, libev等の作者であるMarc Lehmann氏、Perl上でのメール関連ツールのほとんどを手がけるなど様々なアクティビティに関わってきたRicard Signes氏、そして日本からはPerl界で抜群の人気を誇るDeNA社の木村秀夫氏(id:hidek)をお呼びしております。

さらなる詳細はまた5月に入ってからお知らせしていく予定です。なお、スポンサーも絶賛募集中ですので、ご興味のあるかたは info-at-perlassociation.orgまでご連絡ください。

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I'm pleased to announce that despite all the uncertainties caused by the earthquake in March, YAPC::Asia Tokyo 2011 is going to take place as previously announced. It will be on Oct 13, 14, 15, and will take place again in Titech University Oo-Okayama Campus.

Guest speakers for this year are Marc Lehmann of AnyEvent, Coro, and libev fame, Ricardo Signes who needs no introduction (just look at his CPAN page ;), and Hideo Kimura a.k.a. hidek who is perhaps one of the most beloved figures in the Japanese Perl community.

We're planning on launching the site and to make more announcements come May. If you're interested to be our sponsor, please contact us at info-at-perlassociation.org

(書評)Perl CPAN モジュールガイドブック

今回読んだ本:Perl CPANモジュールガイドブック
2011年4月6日初版第1刷発行
著者:冨田尚樹
発行人:村上徹
編集人:岡本淳
編集:大内孝子
カバーデザイン:タナカユカリ
本文デザイン・DTP:ケイズプロダクション
発行・発売:株式会社ワークスコーポレーション
 
評価:読むべし
 
よかったと思う点
一読した感想は,「よくここまで調べたな」というものでした.厳選とはいっても150項目もあるモジュールの解説をするなんて大変なことです.それも,Linux CentOS 5.3,MacOSX 10.6.6,Windows XPでの動作確認を行っています.選択しているモジュールも,今使って古くさくもなく,かつ新しすぎて使うのが怖いということもありません.「はじめに」を読むと初心者向けとありますが,初心者に限らずPerlを使っている人ならば一読する価値があります.ただ,文法についての説明はありませんので,初心者の方は「初めてのPerl 」などを先にお読みになることをお勧めします.
 
いまいちだと思った点
欲をいうと工夫する余地が3点あると思います.
まず,取り上げたモジュールにはそれぞれ1行解説がついています.例えば最初に紹介ししているstrict/warningsでは
「わかりやすいPerlコードとして最低限のラインを引き,多くのケアレスミスを防ぐことができます」
とあります.この紹介はとても有用だと思うので,目次にも記載して欲しかったです.そうすれば,読者が何かやりたいことがあったとき,目次だけでそれを探すことができると思います. ちなみに,どんなモジュールを紹介しているかは出版社のページで見ることができます.
次に,「はじめに」には
「多彩な各ジャンルからおすすめのモジュールを1つ選び」
とあるのですがここで言う「ジャンル」が何を指しているのかわかりませんでした.例えば1章の「ユーティリティ」ではstrict/warnings, constant, autodie, Try::Tiny, Scope::Guardというモジュールを紹介しているのですが,それぞれが属すジャンルが何だかわかりませんでした.何となく,「はじめに」の修正ミスのような気が...
最後に,2ページ目の末尾には
「本書のプログラムを含むすべての内容は,著作権上の保護を受けています.著者,発行人の許諾を受けずに,無断で複写,複製することは禁じられています.」
とあります.出版社のデフォルト文言だと思うのですが,ここは少し工夫して書いてほしかったです.例えばちょうど手元にあったO'REILLYのJavaScriptパターンという本では,「コード例の使用」という節で,
「本書は読者の仕事の実現を手助けするためのものです.一般に,本書のコードを読者のプログラムやドキュメントで使用できます.コードの大分を複製しない限り,O'Reillyの許可を得る必要はありません.例えば...」
となっています.この本をネタにしてブログにコードを書いたりすることが問題ないような記載になって欲しいと思います.
 
おまけ.ホームズとかstar trekとか古典のネタはいいとして,イカ娘は数年後にこの本を読む人はなんだかわからないだろうなー,と.ゴーカイジャーは歴史として記憶に残っていると思うけど.
 

東日本大震災義援金について

JPAでは今回の東日本大震災の復興活動のためにわずかではありますが、義援金を拠出する旨を決定いたしました。JPA会員企業の皆様にはすでにメールで連絡済みですが、以下に再掲いたします:

JPA企業会員各位
お世話になります、
JPA 牧です

今回の東日本大震災により被害を受けられた皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。
金曜日に発生した地震により甚大な被害を受けられている状況を踏まえまして、
JPA理事会として以下の決定をいたしましたのでお知らせいたします。

JPAでは2010年度末の作業としてJPAサイトリニューアルおよび追加制作を予定して
すでに作業の発注を行っていましたが、これを受注先のご厚意によりキャンセルし
この作業全体にかかる予定であった40万円の予算を所定の団体に義援金として
全額寄付することにいたしました。

団体の選定に関しては日本赤十字社を予定しておりますが、現時点では
口座開設がされていないようですので、こちらが開設され次第送金をする予定です。


皆様のご理解と御協力のほど何卒よろしくお願い致します。